百瀬、こっちを向いて。/中田永一 あらすじ 感想

ラブストーリーは読まないって言ったくせに。




中田永一「百瀬、こっちを向いて」 あらすじ・感想

百瀬、こっちを向いて。 [ 中田永一 ]

タイトルからしてキュンとしませんか?(キュンて。)中田永一さんの恋愛短編小説です。

恋愛物を好んで読まないわたしがこの本を手にとった理由のひとつ。
中田永一さんという作家さんは、ある有名ミステリー作家さんの別名義なのです。
そそられません?
ミステリー作家がラブストーリーを描こうが、恋愛小説家がミステリーを描こうが、別にいいはずですよね。
名義を別にするなんて、先入観無しで作品に触れてほしかったのか、ご自身も別の自分で別の世界を描きたかったのか。
本当の理由はわたしは知らないんですが、そんなことを一通り想像し終わると、
もちろん次に気になるのは内容です。
読まずにはいられません。

 

ということで、ざっとあらすじから。ネタバレなしです。

表題作ふくむ4編の短編集です。全て恋愛小説です。
表題作のあらすじを。

外見も中身も地味で冴えない主人公「僕」の視点で物語は進みます。
大学卒業を控えて故郷に帰ってきた「僕」は、高校時代の先輩、「神林先輩」と会います。
何気ない会話を交わし、物語は彼女と知り合った8年前の回想に入ります。
高校に入学して間も無い頃。
「僕」は外見も中身も地味な「人間レベル2」の冴えない生徒でした。
神林先輩はというと、一年生のクラスでもうわさになるほどの学校一の美人。
そんな神林先輩と付き合っているのは、「僕」にとって兄のような存在の宮崎先輩。
ある日、宮崎先輩にひとりの女生徒を紹介されます。
そしてその女生徒と付き合っているフリをしてほしい、と頼まれます。
その女生徒「百瀬」と宮崎先輩は実はと付き合っていて、「僕」にカムフラージュをお願いしてきたのです。

っという感じですね。そろそろお気づきでしょうか。
あらすじ紹介、下手くそです。
要約できない。あれもこれも書きたい。致命的。


さてここから感想を。多分ネタバレはないかな?


まず主人公の「僕」。自分で「人間レベル2」とか言っちゃってますが、とっても魅力的。
小説ですからね、外見地味とか関係ありません、わたしには。
百瀬は宮崎先輩が好きなわけだから、結構「僕」にひどいことを言うんですよ。
ブラックジョーク的な。
それへの返しが上手なんですよねー。クスッと笑っちゃいます。二人の会話のテンポがいいです。

百瀬も、口ではストレートにきつい事を言いながらも根は優しくていい子です。

先輩たちとダブルデートをすることになった二人が、「僕」の部屋で服選びをします。
「僕」のお母さんは、息子が女の子を連れてきたことに大喜びして百瀬に夕食をごちそうするんです。
その時のエピソードが百瀬の良さを物語っていて、胸がきゅっとなりますね。
あからさまな「いい子ちゃん」じゃないんですよ。まぁ多くは語りませんがね。
説明下手だから。

ところどころで「現在」に話が戻ります。
終盤あたりだったかな?現在の「僕」がこんなことを思います。
あの頃の自分たち四人の中で、演技が一番上手かったのは誰か。

百瀬と自分はもちろん、“付き合っている”という演技をしていますよね。
ではあとの二人、宮崎先輩と神林先輩はどんな演技をしていたのでしょう?
そのあたりはぜひ、小説を読んで確かめてくださいね。
ちょっとゾッとしますよ。男の人は特にそうじゃないかな?

そして、この本にはあと三編収録されていますが、はずれ無しです。
どれも面白いし、何より読みやすいですね。

ラブストーリーって、登場人物が大人であればあるほどドロドロしてるじゃないですか。
仕事と恋愛と結婚と不倫と。相場が決まってる。個人的にそう思うだけですが。

だからって中高生の恋愛って、真っ直ぐで幼くって甘ったるい。
早く大人になりたかったり大人になんかなりたくなかったり、すぐ感情的になったりして、思春期って面倒くさい。

ラブストーリーに対する個人的な意見ですよ。しつこい?
だからあんまり好きじゃない。生々しいからかな?恋愛物は共感が不可欠のような気がするから。
でもこの小説はとってもすんなり読めました。

先にも書きましたが、会話のテンポがいい。さらっとしていて重くないし、面倒くさくもない。
甘ったるくもないし、感情的にもならない。
これは四編全部に思ったことです。

だけどきっちり登場人物の“人となり”が見えてくるし、ラブストーリーの醍醐味である”胸キュン”や”切なさ”も味わえます。

タイトルの台詞がね、自分のことを「人間レベル2」と言っちゃう「僕」の性格をよく表していますよね。

「こっち向けよ」じゃないんですよ。
「こっち向いて」ですよ。
かわいい。

この表題作の、百瀬、こっちを向いて。は、2014年に映画化されています。
まだ見ていませんが興味があり、見てみたいなと思っていたところ。
なんと来月wowowさんで放送されるとのこと。わたしwowowユーザーなんで。(知らん)
せっかくなんで、それを見てから映画の感想を書きますね。