くちびるに歌を/中田永一 あらすじ 感想

夏休みの読書感想文は終わりましたか?
小学1年生の長男は今まさに書いています。初感想文。口出しせずに見守ります。
本は課題図書の中から、自分(息子)とリンクしやすそうなのを選びました。
感想文の基本中の基本、1番簡単なコツは自分と登場人物をリンクさせること。
登場人物を通して自分自身を見つめる。それさえ書けていたら、たいてい二重丸もらえます。たいてい。
花丸もらうコツですか?情熱と希望をちらつかせればカンペキです。ウソです。




中田永一「くちびるに歌を」 あらすじ・感想

くちびるに歌を (小学館文庫)



またまた読書感想文に最適な青春物語を選んでみました。

ちなみに映画版は観ていませんので原作のみの感想になります。

アンジェラ・アキさんの有名な「手紙~拝啓十五の君へ~」が課題曲だったNコンが題材になっています。

ではあらすじから。ネタバレなしです。

長崎県五島列島のある中学校に、産休に入る音楽教師の代理で「自称ニート」の美人ピアニスト柏木はやってきた。
ほどなく合唱部の顧問を受け持つことになるが、彼女に魅せられ、男子生徒の入部が殺到。
それまで女子部員しかいなかった合唱部は、練習にまじめに打ち込まない男子と女子の対立が激化する。
一方で、柏木先生は、Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲「手紙~拝啓十五の君へ~」にちなみ、
十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課した。
そこには、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた。

文庫本裏表紙より

吹奏楽部で全国コンクールを目指していた中学生時代を思い出しました。
地方大会で金賞をとったとき、初めて自分の口から悲鳴みたいな歓声が飛び出たのを覚えています。
人間は感激した時、身体の奥から湧き上がる喜びがこんなふうに勝手に声になるんだと知りました。
毎年あれを味わうために、練習に明け暮れた夏でした。

って、関係のない話は置いといて。無駄話をどうもすみません。

ここから感想を。ネタバレなしです。

ひたすら純粋な中学生たちでした。
舞台が田舎(こら)だからでしょうか?というより物語上そうする必要がないからでしょうが、
都会の、いわゆるイマドキの子ども達が抱えているような、窮屈さや便利が故の不自由さが全く感じられない。

”等身大の秘密”とあらすじにありますが、中学生が主人公の作品につきものな”思春期特有”の匂いが一切しない。
だからこの作品に漂っているのは、中高生の漠然とした焦りや苛立ちが連れてくる不安定な空気ではなくて、
終始爽やかで甘酸っぱい青春のメロディのみです。いいもの見せてもらいました。誰だよ。

病気の母を捨てて女と逃げた父親のせいで、男子に拒否反応を持つナズナ。
自閉症の兄を持ち、学校では「ぼっち」で過ごしてきたサトル。
この二人の視点で物語は進みます。

随所で誰かが書いた「15年後の自分へ」の手紙が登場します。サトルの手紙はさすがに、ちょっと切ない。

ナズナの過去に触れることになるラストのエピソードは、心温まるものでした。お見事な伏線回収でしたし。

二人ともそれぞれ重めの現実を抱えていますが、二人とも決して悲観的ではない。そう描かれていない。
ナズナもサトルも、もちろん他の部員達も、いいキャラしてます。すれていない、誰一人。

サトルは自分のことを「存在感が無い」「ぼっち」って自覚しているんですけどね、
そんな自分を表現する言葉がいちいちおもしろい。まぁ作者さんのセンスですよね。
いちおしの一文を引用させてください。

合唱部でも僕は抜群に存在感が無かった。限りなく透明にちかい僕だった。(P136)

ふいうちだったんで声だして笑いました。
あれだよね?あの有名な作品名にかけてるんだよね?サトルくん?
みたいな感じで(でたーテキトー)、そこらにクスッと笑っちゃうような微笑ましい言い回しやセリフややりとりが出てきて、
青春のキラキラ感をより楽しめます。

「手紙」の歌の中で、大人になった自分が、十五歳の自分にこう言います。

”自分とは何でどこへ向かうべきか 問い続ければ見えてくる”

大人になった自分は知っているということです。たくさん悩みしっかり向き合えば、ちゃんと自分が答えにたどり着くということを。
なるほど、大人になった自分自身が言うんだから間違いない。

Nコン本番に至るまでのエピソードも盛りだくさんで飽きさせないし、前日も当日もすんなり終わらない。

自分自身の力と、仲間の優しさを借りて乗り越えていく。
明確な目的を持って、みんなで力を声を合わせていく。
そんな日々や過程を彼や彼女達は一生忘れないだろうし、未来の自分の力にしていくんだろうな。

頑張れみんな。

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