望郷/湊かなえ あらすじ 感想

湊かなえさん、山本周五郎賞受賞おめでとうございます。「ユートピア」読みたいな。
歴代受賞作の中だと私は、「ゴールデンスランバー」「光媒の花」「エイジ」「火車」を読みました。
どの作品もお気に入りなので、個人的には他の賞より信じてます。(何様)。
今回、某モデルさんが書かれた作品がノミネートされ注目を集めていたので、選考結果が気になっていたのですが。
よかった、湊さんが受賞して。というのが本音。モデルさんすみません。
やっぱりさ、それ一本で頑張られている方にっていう気持ちが働いちゃう。ええ、ただの偏見ですけども。





湊かなえ「望郷」 あらすじ・感想

望郷 [ 湊かなえ ]


というわけで、湊作品を選んでみました。

まずあらすじから。ネタバレなしです。

暗い海に青く輝いた星のような光。
母と二人で暮らす幼い私の前に現れて世話を焼いてくれた“おっさん”が海に出現させた不思議な光。
そして今、私は彼の心の中にあった秘密を知る…
日本推理作家協会賞受賞作「海の星」他、島に生まれた人たちの島への愛と憎しみが生む謎を、名手が万感の思いを込めて描く。

「BOOK」データベースより

因島がモデルの白綱島を舞台にした短編集です。湊さんの短編集は「サファイア」を読んだときに、長編のほうが好きだなぁと思ったので、この本は購入後しばらく本棚で眠っていました。
最近ふと湊作品が恋しくなって、やっと手にとったという感じです。

ここから感想を。ネタバレなしです。

全体的な感想から書くと、随分おとなしめだったなぁという印象。湊かなえっぽくないといいますか。
でもというか、だからというか、「サファイア」より随分馴染めた。世界観が独特すぎず、入り込みやすい。
私は湊さんが描く誰にも似ていない世界観が大好きだけど、短編ならこれで十分だと満足。

あらすじに載っている「海の星」。これは表紙の幻想的な装丁に繋がっていて、タイトルの「望郷」をより切なくさせます。
私は数ヶ月前に地元に帰ってきたけど、この本を違う土地で読んでいたらすぐ実家に帰りたくなったかもしれないな。

私の生まれ育った町は島ではないけれど、この作品で描かれている“閉塞感”に似たものはある。
“閉塞感”に圧迫され外へ出て行く人の気持ちも、どこかその“閉塞感”に満足している人の気持ちもわかる。

この本の印象は読む人の状況というか育ってきた環境に結構左右されるんじゃないかな。
例えば都会育ちの人からすれば理解できない風習やしがらみもあるし。読んでいてイライラする部分、場面もあると思う。
田舎育ちの私でさえ、「そんなものほっとけばいいのに」と思いながら読んだ部分もあるし。

でも、ふるさとを思う時、きっと思い出すのはそういう部分。どこの町にもない、ふるさとにしかない“匂い”みたいなもの。
そういうもの全部ひっくるめて、「望郷」なんだな。

ちょっと“感想”から逸れちゃったので戻して、収録作の中から1番好きなお話を。
三つ目に収録されている「夢の国」。夢の国といえば某テーマパーク。もちろんそれをモチーフにしたであろう“東京ドリームランド”が出てきます。

主人公は子供の頃に何度も夢の国に憧れ、近づいては大人たちの事情に振り回され遠ざかる。
読んでいて胸が痛くて、そしてかなり腹が立ったのは、自分も同じような環境だったからかな。大人ってなぜあんなに自分勝手なんでしょうね。←そこそこいい歳した大人が書いてます

ちなみに私は修学旅行で無事“夢の国”に行きましたけど、あの修学旅行にまつわるエピソード(読んで確かめてください)、私があの場にいたら暴動起こしますけどね。そりゃないよね、と最大の同情をしたシーンでした。

主人公が大人になり、家族で“夢の国”に訪れたときの心情が切ない。(あ、これはネタバレではないですよ。そのシーンから始まります。)
“ここに焦がれていたのだろうか”というモヤモヤと、そのあとの“ドリームランドはここなのだ”という感動と。主人公がようやくあの頃の自分を抱きしめられた瞬間のように思えました。

私も子供ができてから某夢の国に行きましたが、最後に行ったのは長男4歳に次男2歳のとき。絶叫系のアトラクションは乗れなかったけど、楽しそうな子供たちを見るのが楽しかったな。そろそろまた行きたいな。現実を忘れに。

イヤミスの女王と言われる湊さんなので、それを踏まえてこの短編集を読むと少し物足りないかも。
ミステリー要素はもちろんあるし、そのからくりも“あぁ湊さんだなぁ”と実感できるものなんだけど、他のどの湊作品よりも万人受けする作品なんじゃないかな。というか、そういうのを意識して書いたのかなぁと思いました。「望郷」というタイトルも然り。

湊作品が気になっているけどなんか抵抗あるなーって方は、ぜひこの作品から読むことをおすすめします。ふるさとが恋しくなっちゃうけどね。

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