アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎 あらすじ 感想

本は断然、文庫派です。
鞄小さいんで。




感想文、1冊目。伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」 あらすじ・感想

アヒルと鴨のコインロッカー [ 伊坂幸太郎 ]

伊坂作品の中でも人気かと思われます。



ざっとあらすじを。ネタバレなしです。

主人公、「僕」こと椎名は、大学入学の為に引っ越してきたアパートで、全身黒づくめで長身の青年「河崎」と出会います。
「一緒に本屋を襲撃しないか」
出会ったばかりの河崎からそんな誘いを受け困惑する椎名ですが、気付けばモデルガンを手に本屋の裏口の前に立っています。
ボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさみ、2回歌うごとに裏口のドアを蹴る。河崎に指示された椎名の役割はこれだけです。
その間に、河崎は「広辞苑」を盗み出す。同じアパートに住んでいるブータン人が欲しがっているから、というのが理由です。

と、まぁこんな感じで物語は始まります。

あらすじを書くのが面倒になったわけじゃありません、断じて。
この小説を読んだ方ならわかると思いますが、ネタバレ無しで説明するには少し難しいお話です。

この小説は、「僕」の視点で語られる上記のお話と並行して、「二年前」のお話が、「わたし」こと「琴美」の視点で語られています。
現在と二年前。椎名と琴美。共通して登場する「河崎」と「ブータン人」、そしてキーマン「麗子さん」。
ふたつの物語はやがてひとつの結末へと繋がっていきます。

ここから感想です。核心をつかない程度のネタバレがあるかもしれません。

先にも書きましたが、この小説は伊坂作品の中でも人気かと思われます。

私も伊坂作品を初めて読む人にはまずこれをおすすめします。
まずタイトルが目を引きますね。
内容を想像しようと思うんだけど全くできず。しかしだからこそ気になるっていう上手いつけ方。

途中、ブータン人のドルジは琴美にたずねる。

アヒルと鴨はどう違うのかと。

ここで不思議なタイトルの意味がほんの少しだけわかったような気になるんだけど、本当の意味にたどり着くのはラスト近くになってから。
そしてその時、なるほどと納得すると同時に、この小説のすべてが要約されているようなその響きに、なんとも言えない切なさがこみ上げてくるんですよねー。

終盤、麗子さんが椎名に言う、

「君は、物語に途中参加しただけなんだ」

この台詞にもまた、納得させられます。

別々の視点で語られる「二年前」と「現在」。
交わるような交わらないような微妙な距離感にあった二つの物語は、
主人公「椎名」が登場しない「二年前」の物語こそが中心にあり、「現在」はその続きの物語、「椎名」はまさに途中参加した脇役なのです。

伊坂さんは伏線の張り方が秀逸だと有名。あの台詞もこの描写も伏線、なんてことがたくさん。
登場人物の冗談っぽい台詞も、その軽快な響きに似あわないくらい重い意味を持っていたり。
あちこちに散りばめられた伏線を、きっちり全部回収してくれます。

個人的に思うのですが、伊坂さんの伏線回収のタイミングって絶妙なんですよ。

時にすっきりしたり時に切なくなったり、伏線回収やネタばらしの鮮やかさを楽しむのも、伊坂作品を読むにあたっての醍醐味ですね。

この作品は映画化もされています。物語の性質上、「映像化不可能」と言われていましたが、まぁうまいこと表現されていました。

映画もよかったけれど、この作品はぜひぜひ小説から読んでほしいですね。

物語中、いくつか事件が起きますが、いわゆる謎解きを楽しむような事件ではありません。

この小説のミステリー的要素は別のところにあり、それが「映像化不可能といわれた」ことと、わたしが「小説から先に」と薦める理由です。

小説を読んで、内容とは別の部分で味わえる一度きりの感動を体験してほしいなと思います。

作者・伊坂幸太郎さんの魅力がたっぷり詰まっています。

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